ホソバテンナンショウ(細葉天南星、学名:Arisaema angustatum)は、サトイモ科テンナンショウ属の多年草。別名、ハウチワ。
小葉間の葉軸が発達した鳥足状に分裂した葉を2個つけ、仏炎苞は緑色になり、仏炎苞口辺部は狭く耳状に開出する。小型の株は雄花序をつけ、同一のものが大型になると雌花序または両性花序をつける雌雄偽異株で、雄株から雌株に完全に性転換する。
特徴
植物体の高さは100cmに達する。偽茎部や鞘状葉にある斑は赤味が強い傾向にあり、偽茎部は葉柄よりはるかに長く、偽茎部の葉柄基部の開口部は襟状に開出する。葉はふつう2個つき、葉身は鳥足状に9-17個に分裂し、小葉間の葉軸が発達する。小葉は披針形から狭楕円形で、先端と基部はとがり、縁はふつう全縁であるが、しばしば細かい鋸歯があることがある 。
花期は4-5月、葉と花序が伸び、花序は葉の展開よりやや早く展開 し、花序柄は葉柄とほぼ同じ長さかまたは長く、花序は葉より上部に位置する。仏炎苞は緑色で縦に白い筋があり、仏炎苞筒部は円筒形になり、筒部口辺部がやや狭く耳状に開出し、開出部はしばしば半透明になることがある。仏炎苞舷部は筒部より短く、卵形から広卵形で、先は鋭頭から鋭突頭になり、基部はやや横に張り出し、舷部内面には隆起する細かい脈はない。舷部の縁はときに紫色を帯び、まれに微細な突起があることがある。花序付属体は基部に柄があり、下部はやや太く、先端に向かって細くなり、そのまま直立するか上部でやや前方に曲がる。1つの子房に-5-8個の胚珠がある。果実は秋に赤く熟す。染色体数は2n=28。
分布と生育環境
日本固有種。本州の関東地方、中部地方、近畿地方、岡山県に分布し、低山地から山地の林下や林縁に生育する。
名前の由来
和名ホソバテンナンショウは、「細葉天南星」の意であるが、ナガバマムシグサ A. undulatifolium のように細長いわけではない。
種小名(種形容語)angustatum は、「狭くなった」「細くなった」の意味
ギャラリー
近縁種
同属のウメガシマテンナンショウ A. maekawae に似るが、同種は仏炎苞筒部口辺部が耳状に広がらないで狭く開出し、舷部内面が粉白色で乳頭状の細突起が生じ、花序付属体は太い棒状で先端はややふくらむのに対し、本種は仏炎苞筒部口辺部がやや狭く耳状に開出し、舷部内面に粉白色に見える乳頭状の細突起はなく、花序付属体は細い棒状となることが異なる。
また、ミヤママムシグサ A. pseudoangustatum にもよく似るが、同種は仏炎苞が葉の展開より遅く展開し、仏炎苞筒部口辺部はやや前に傾いて狭く反曲し、仏炎苞舷部の下半面がしばしば半透明になる。本種は仏炎苞が葉の展開よりやや早く展開する。なお、ミヤママムシグサの種小名(種形容語)pseudoangustatum は、pseudo-angustatumであり、「~に似た」「偽の~」 -「狭くなった」「細くなった」の意味であるが、この場合、「ホソバテンナンショウに似た」の意味になる。
脚注
参考文献
- 加藤雅啓・海老原淳編著『日本の固有植物』、2011年、東海大学出版会
- 林弥栄初版監修、門田裕一改訂版監修、平野隆久写真、畔上能力他解説『山溪ハンディ図鑑1 野に咲く花(増補改訂新版)』、2013年、山と溪谷社
- 門田裕一監修、永田芳男写真、畔上能力編『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』、2013年、山と溪谷社
- 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 1』、2015年、平凡社
- 牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
- 邑田仁・大野順一・小林禧樹・東馬哲雄著『日本産テンナンショウ属図鑑』、2018年、北隆館
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)




